CLOCK

2019年08月11日

1秒よりも早く刻む電光のメモリ。
その束の間に何万本という花が競り落とされ
世界中への流通を可能にした電子セリ
“クロック”。
自ら野に入りたった1輪を選び抜き
その命を惜しみながら器にいけたかつての花人は
そんな時代を嘆くだろうか。
つぼみがふくらみ花が咲き、散りやがて果てて行く様を「時」と呼ぶならば、
“クロック”が叶えた未来は
花の在り様を歪んだ方向へ進めてしまったのだろうか。

どんなにいけても、美しくいけても、花はその姿をとどめない。
先人たちは、それでも花をいけ続けた。
彼らは知っていたのだ。
すくってもすくっても指の隙間から零れ落ちて行く
その流れの中にこそ美しい光の粒があることを。
その姿を、何もできずにただ眺めるしかない無力さに
しかし人は心を震わせるのだと。
私たちが先人から受け継いだのは
花の選び方やいけ方の指南ではない。
この国が独自の気候と季節と文化の中で1つ1つのパーツを作りあげた
“時計”だ。

先人たちは見る術もなかった南の楽園の花、高い高い山の上の花。
そんな花や新しい技術や道具が、望めばいくらでも手に入る時代。
彼らがこの姿を、嘆くことがあるだろうか。
彼らが私たちに託した願いは、
どんなに時代が移ろおうとも、受け継いだ“時計”を巻き続け、
この国に流れる、正しい時を生きていくこと。

その先に、2つの時計(クロック)が響き合う未来を信じて。

CLOCK