5 花よりも飾る場所と向き合う

◆「一輪挿しをしてみたいのですが、どの花がおすすめですか?」

と、いう質問を、お客様からよくいただきます。そういう方にはだいたいいつもお花を選ぶ前に、「どんな場所に飾りますか?」とお伺いします。さて今回からしばらく、実際にお花屋さんでお花を選ぶときのポイントについてお話したいと思います。そしていよいよ花を「いける」とはどういうことなにかについて、触れていこうと思います。

さて、一輪挿しは「いけ花」です。
フラワーアレンジメントといけ花の違いをとても簡単に説明すると、前者が基本的に花の作品のみの美しさを極めるのに対して、いけ花は、「花」と「周りのもの」との対比や協調によって、全体の美しさを極めます。本格的ないけ花なら、掛け軸や器などとのバランスが大切になってきますが、自宅にちょっと飾る場合は、掛け軸なんてとんでもない!方がほとんどかと思います(もちろん我が家もです)。しかし。花をいける「空間」は、必ずあるはずです。そことは向き合わなければなりません。そして一輪挿しという最もシンプルないけ花の場合、その空間に合う花を選ぶことさえできれば、花いけはほとんど成功していると言えます。

◆空間を見極める
「って言われても・・・」と思われたこととお察しします。花をいける場所・空間のチェックポイントは以下の通りです。

①背景は何もないか、ごちゃごちゃしているか
②目線と同じくらいの場所か、見下ろす場所か
③照明は明るいか、暗いか、色付きか

たった3点です。何も考えずに花を選ぶか、この3点を基にいける場所に合った花を選ぶかで、完成度は大きく変わります。まずチェックするポイントを詳しくご説明していくと・・・

①背景は何もないか、ごちゃごちゃしているか
まずその場所の後ろには、背景と呼べるような白い壁などがあるでしょうか?あるいはオフィスのデスクの片隅、いろいろと化粧品などが並んでる鏡台の上、食卓など、花を見るときに同時に他のものがいろいろと視界に入る場所でしょうか?表現があまり良くなくて申し訳ないのですが、ごちゃごちゃしているのが悪いということでは決してありません。そこに見栄えのするお花を選んでいただきたいのです。細かい柄の入った壁紙なども、背景の分類的にはごちゃごちゃです。

②目線と同じくらいの場所か、見下ろす場所か
例えば玄関の、胸の高さくらいの靴箱の上で、お花を見るときも立ったままというような場合や、鏡台や洗面台の鏡の横など。立っているか座っているかに関わらず、そのお花が最も視界に入るときの高さが、自分の顏から胸のあたりくらいまでに置く場合は、目線と同じくらい、です。玄関先(外)の地面に近い場所や、置くのはローテーブルだけど立ったまま見る場合が多い、などは見下ろす場所です。見上げる場所にお花を置くことは少ないかと思うので、ここではいったんとばします。

③照明は明るいか、暗いか、色付きか
大抵は白っぽく明るい普通の照明の場所にいけられる場合が多いかと思いますが、寝室やお手洗いなど暗め、あるいは電球色などの場合。お店に置くことをお考えの方で、バーなどのお店は照明が暗いことが多いかと思います。

お花を飾る場所が①背景に何もなく、②目線と同じくらいの場所で、③明るく白っぽい照明なら、あまり難しいことは考えなくても、だいたい何をいけてもきれいにきまると思います。とりあえず気に入ったお花を1本買って、過去のレッスンを参考に(▶1花いけにセンスは要らない)花瓶と長さを合わせていけてみてください。
それ以外の場所の、それぞれのお花の選び方は次回以降順番にご紹介していこうと思います。