2 初心者さんへおすすめする花瓶

◆花瓶の「素材」?
前回、一輪挿しを上手にいけるポイントは器の形!と申しましたが、もう一つ、ただ器の選び方で見栄えがよくなるポイントがあります。それは、器の素材です。どんな花瓶も何かしらの素材からできています。これが花と合っているときまるし、また同じ花でも器によって雰囲気を変えることもできます。皆様あまりじっくり考えることはないかもしれませんが、
花瓶の素材は多めに分けても4つしかありません。
まずいけ花などに使われて一般的なのが、土から作られた器・陶器です。信楽焼とか有田焼とかです。続いて、植物。つるを編んだ籠とか、竹を切った器とかです。3つ目は、いけ花を習ったことがない方には多分馴染みのない、金属。博物館で見かけられたことがあるかもしれない、青銅の壺、みたいな感じです。金属の花瓶はお値段的にも用途的にも毎日の暮らしにはちょっと合わないので、いったん忘れてもらっても良いくらいです。ここら辺のその他の素材の器に関しては別に詳しくまとめましょう。今回のテーマは、4つ目の、ガラスです。私は現代の生活に一番使い勝手の良い器は、ガラス製のものだと思います。日本で発達した〇〇焼みたいな器にはやっぱり日本らしい花が合うけれど、西洋でも日本でも歴史のあるガラスは、和花にも洋花にも合います。それは同時に日本らしい和室にも、西洋風・外国のテイストのレストランなどにも、現代的なマンションのようなお家にも合うということ。どこにでも売っているし、値段も安いものから揃っているし、たとえ安いものでもそんなに安っぽく見えないというのもガラス花器のよいところ。安い陶器や籠は、見るからに安っぽくなってしまう場合があるので・・・!

◆初心者さんにはガラス花瓶
なのでこれから一輪挿しを始めようという方がとりあえず一つだけ花瓶を買う場合。ガラス製の口の細くなった器、がおすすめです。
もう一点ガラス花瓶の良いところは、厳しいルールが決まっていないこと、です。前回、上手に花をいけるにはセンスじゃなくて知識!知りさえすれば誰でもある程度上手に花をいけられるんです!と申しましたが、知識が足枷になる場合もあります。日本は花いけの歴史が長く、その中でたくさんのルールが生まれ「花伝書(かでんしょ)」と呼ばれる本にまとめられてきました。ちょっとしたテクニックから重要なものまでありとあらゆる花いけの知識がまとめられ、古典的な花やいけ方に関しては、現代でも通用するルールもあります。逆にお正月や金属の器など、日本に昔からあって格式の高い場面や道具を用いるときは、このルールを知らないと花をいけることができません。わからないままに花をいけると知っている人に「わかってない」と思われるし、知らない人でもなんとなくしっくりこない、変な花と思われてしまいます。
ただしこの花伝書は、ほとんどが江戸時代までにできました。当時はガラス製の器に花をいけることがそんなに一般的ではなかったため、花伝書にはガラス花器の取り扱いに関して触れられていません(私の知る限り)。いけ花界の難しいルールに縛られないので、私がお教えできる程度の知識があれば、簡単にきれいにいけていただけるのではないかと思います。

◆春のお花にはガラス花瓶
器を選ぶとき、あるいは器に合った花を選ぶとき。簡単なのは、質感を合わせること。いけ花は花だけでなく、花と器と空間を合わせ(調和させ)たり対比させたりして全体を完成させます。ガラスの質感といえば、何と言っても、「透明」。だから、ガラス花器には透明感のあるお花ならだいたいなんでも合います。透明感のあるお花といえば、春のお花。2月初旬の今まさに旬のお花たちです。「いやいやまだ真冬だし」、と思われるかもしれませんが、これもまた一つポイントで、切り花の旬は、実際の季節より一段早くきます。ちょうど良い目安になるのが二十四節気で、先日ちょうど立春(春の始まり)を迎えました。天気予報では「暦の上では春ですが」なんて言われますが、その「暦の上」の季節が、切り花の旬です。春のお花は、ぜひ今飾りましょう。


どこのお花屋さんでも見かける春のお花といえば、スイートピー、チューリップ、ラナンキュラス、フリージアなんかがあります。ヒヤシンスやポピーも良いですね。どれももともとは地中海周辺のお花で、瑞々しく透明感があり、ガラスの器によく合います。ヨーロッパのお花とガラスというのも、私たちのイメージに合います。茎も硬くないのでどんなはさみでも簡単に切れますし。1回目の記事(1 花いけにセンスは要らない)も参考に、長さを調節していけてみてください。

◆まとめ
・初心者さんにおすすめなのは、口の細くなったガラスの器
・春のお花はガラスに合う

グリーンのガラス小瓶(500円)に、パープルのヒヤシンス(800円)