1 花いけにセンスは要らない
◆「センスが良い」の本当の意味
「わ~、きれ~~」と店に入ってきていただくも、私はセンスがないから花をいけるなんてできない、というようなことを言われる方が少なくありません。
私は、声を大にして言いたいのです。花をいけるのに、本当に必要なのはセンスなんかじゃありません。どうすればきれいにいけられるか?どの花とどの花を組み合わせれば素敵なのか?器はどうやって選べば良い?
私は一応、花を水の入った器に入れることでお金をいただいているわけですが、そのときに発揮しているのは自分の生まれ持ったセンス、などでは決してありあません。
必要なのは、知識です。花の種類、長さ、角度、取り合わせ、器の選び方。例外も含め、だいたい全部決まっているのです。私はあまり得意ではないけれど、たぶん料理に似ているとではないかと思います。野菜を長く煮込むと素材の味がスープに出ておいしいけれど、白菜やほうれん草みたいな葉物は、長時間火にかけるとぐちゃぐちゃになって本来の魅力(食感とか)が失われるので、カレーには入れません。詳しく知らないけれど、栄養素が壊れたりもしますよね?「詳しく知らないけれど」。そう、これは、個人のセンスじゃない。先人たちの経験がすでに証明してくれている、知識なのです。彩りにほうれん草を使いたければ、別に茹でて後から添える。これも知識。花いけにも料理にもセンスの良い人というのがいるけれど、それはこの経験を知らないうちに手に入れている人のことです。あるいは本当にセンス(感覚)が必要な場合もあるかもしれないけれど、それは正しい知識をじゅうぶんに発揮した後でスパイスのように効いてくるものであって、きれいにいけられた花が、1から10まで個人のセンスによってできていると思ったら、大間違いなんです。
◆とりあえず、口の細くなった瓶を用意してください。
さて、せっかく「現代なげいれ教室」初回なので、難しいことは後にしてとりあえず一輪挿しを作ってみましょう。
ご近所か、あるいはちょっと町に出れば、最近はかわいいお花屋さんがいっぱいあります。いろいろお伝えしたい知識はこれから順番に紹介することにして、とりあえず気に入ったお花を一輪買ってみてください。なんでもいいです。くるっと店内を見まわして目が合ったこです。スーパーのお花は今回はパスしましょう。悪いからじゃありません。だいたい2~3本束になっているからです。今回はとりあえず1本です。
続いて器。一輪挿しをするのに「正しい器」とは?答えは、「口が細くなっている器」です。カンタン。一輪お花があって、口の細くなっている器があれば、とりあえず一輪挿しができます。あとはお花の特徴や器の材質の取り合わせでどんどん良くなって行きますが、まずはこれ。ホームセンター、雑貨屋さん、インテリアショップと、いろいろ売っていると思いますが、円柱型になっている口と胴体が同じ大きさのやつではなく、胴体に対して口が圧倒的に細くなっている、とっくり型のやつです。
花をいけるとは、水の入った器にまっすぐかや斜めなど、思う角度に花を留めることです。一輪の花を円柱形の花瓶に入れるとくるくる回ったり傾いたり、思うような位置に留まりません。剣山とか別の道具が必要になってしまいます。あれは、一輪挿し用の花瓶ではないのです(円柱型に何をいけるかはまた今度)。花瓶を買いに行くのが面倒なら、お酒を入れるとっくりは結構良いです。あと外国のビール瓶とか、栄養ドリンクの小瓶も、ラベルはがしたら結構かわいいく使えます。
お花一輪と口の細くなった器が揃ったら、口の細くなってる部分の少し下くらいまでお水を入れましょう。ハサミはキッチンバサミでも文具ばさみでも、とりあえず切れれば何でもいいです。そんなことより大切なのが、長さです。器が10㎝くらいまでの小さいものなら、その2倍くらい。器から出ている部分が2倍くらい、です。それより大きい器なら、器の1.5~2倍くらい。不安なら物差しで測ってもらっても良いですが、だいたいでぜんぜん大丈夫。緊張したら、気持ち長めに。一輪挿しの場合は、短すぎるときまりません。
お疲れ様でした。いつもよりうまくいけられましたか?
◆まとめ:とりあえず一輪挿しを始めるには
・お花一輪には、とにかく口の細くなった器
・お花の長さは、器の2倍(大きい器はなら1.5~2倍)