「旅行記~水のある景色~」をまとめてみました
「西村花店」の魅力は(自分で言うのも何ですが)、華道家によって運営されていること、です。同じ切り花のプロでも、両者は別れてしまっている場合が多く、これは意外とめずらしい。そしてもう一点は、その店が、京都の木屋町通にあることと、その町家が高瀬川というかつて運河だった川に面しているということです。
思い返せば水に恵まれた土地で生まれて育ち、それが当たり前すぎてどんなに有難いことかも知らないままに、でも、水のある景色に惹かれてきました。私がアムステルダムに滞在している間、ある大学の先生が送ってくださった言葉が今でも忘れられません。「人間は水がないと生きられませんから、歴史ある都市には、必ず川が流れています」。たくさんの、水の流れるまちの風景を見て来てくださいね、と。
私は花が好きです。でも本当に好きなのは「日本の季節」で、「日本の季節」というのは、日本の人々が作り上げたてきたものに他なりません。同じように水のある景色が好きで、水の流れているまちが好きで、それは結局のところ、その土地での人々の営みそのものなのです。つまり、花のある空間も水のある景色も、そこから見えてくるのは、日本の人々の美意識や暮らし方である。その中で現代にもいかせる知恵と、未来にも受け継ぎたい美しいものを見極めること。それこそが、私が花を通して、本当にみなさまに伝えたいことではないかと思うのです。
多くはありませんが、私にそのことを教えてくれた“水のある景色”について書いた文章を、このたび新設いたしました”TRAVEL”というカテゴリーにまとめてみました。本当は“WATER”としても良いのですが、そこにはいつも旅をする人の視線が重要な気がするので、とりあえず「旅行記」です。早く「アムステルダム」の章と、「木屋町通」の章を書きたいものです。