4月;桜 “花びらと言葉”
散って行く、その姿が美しいのだとしたら。
ふくらんでいくつぼみ、 春の精が舞い降りたみたいに
先から少しずつ咲いていく花。
空を覆うような満開。
そして、散って行く花びら。
私たちはその姿を、あがいてもあがいても
手にすることができないで
美しいと同時に失われていくその光景を、
ただ無力に眺めてきた。
そして歯がゆさに抗いながら
その感動を記憶し愛する人に伝えるため
必死で言葉を紡いできた。
それでもなお、私たちは
届かない桜の花に手をのばす。
この国の春という季節には、
舞い落ちた花びらの分だけ
美しい言葉が積もっていく。