花を、言葉とともに。

ここには言葉が足りない。
それが、花を売り花をいけて、花を通して様々な人と出会い

感じた私の結論で、始まりです。
きっと昔は、言葉で伝えきれないことを、花に託して愛する人に贈っていたと思うのです。

「君が恋しい、君を想う」と、正しく表現されているはずの言葉が

それでもまだ足りなくて、和歌に花を添えたと思うのです。

今、私たちが愛する人に花を贈ろうと思うとき、

花屋に行けば数限りない花があって、

平安時代にはなかった花や、もともと日本では咲かない花が、

簡単に手に入るようになりました。

ここには南の楽園の花も、青いバラもあるのです。

 

花の種類や色が、どんどん増えていく幸福なせかい。

だけどそこには、言葉が足りなくなってしまいました。

冷蔵庫の中で冷え切っているこの花が本当はいつ咲くのか、どこに咲くのかどんな風に咲くのか、

その土地の人々に、どんな風に愛されているのか、

知らないままでその美しさだけを、愛でるようになってしまいました。

 

花をいけるときも、贈る花を束ねるときも、

ここに、もっと花を語る言葉があれば、と思うのです。

 

だから、花を、言葉とともに。

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