土間

幸か不幸か、築100年ほどの町家を、アトリエ兼ショップとしてお借りしております。2度目の冬。「土間寒いでしょう?」とよく聞かれますが、寒いです。

現代の建物にいるとあまり意識しませんが、一日は太陽が出ているうちは暖かく、陰って行くとともに少しずつ冷えて行き、夜が深まるとともにまた冷えて行きます。当たり前のことですが、「夜になった」「寒くなった」ってわけじゃないんですね。外が冷えて行くと土間に敷かれた石が冷えて行き、空間全体を冷やします。まるで冷蔵庫のようで、うちの花はこの季節、本当に長持ちします。

もこもこの靴を履いた足がきーんと冷えて行くのがわかると、冷えて行く冬の大地の存在を感じます。私はここに住んでいるわけではないので、火事防止のためにガスは止まったまま。電気ポットで沸かしたお湯でお茶を飲むと、文字通り、体が温まるのがわかります(また冷えるのも)。お客様にお茶を出す作法に、お湯呑みをあらかじめお湯で温めるというのがありますが、土間の洗い場に置かれたお湯呑みや急須は、大げさに言うと持てないほどに冷え切って、お湯は注いだ傍からぬるくなります。アトリエで冬を過ごす知恵として、自然にお茶を注ぐ前にお湯を入れて、お湯呑みをくるくる回しているとはたと気が付きました。これは作法なんかじゃなくて、生活の知恵だったのだなぁ。

「ストーブがなきゃ生きていけない!」って、家に帰るとやっぱり思うけど、ストーブができるずっと前からあった、冬という季節。その「冬」にこそ、美しい言葉や習慣が生まれたのだろうなぁ。

 

 

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