生花と陰陽説

生花のポイントは、三角形。足元を一つにまとめ、ひらがなの「く」の字を描きその先が足元に戻るようにして、一番長い枝の先と足元が、まっすぐな線でつながるように。
天・地・人を表す3本の「役枝」(メインの枝)でいけるが、「添」として貧相な箇所に足したりするので、5本や7本でいける場合が多い。何本と決まりはないが、総数は奇数になるように。


 

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生花(せいか)は江戸時代に興り、江戸庶民の生活の向上と共に発展し、流行した古典いけ花のスタイルです。天・地・人の“三才”(さんさい)を表す3つの枝で構成し、全体を三角形にまとめ、水際の立ち上がりを1本の枝のように見せるのが特徴です。壮大なことにこの三角形は、宇宙を表します。

三角形は、「天円地方」により導き出されました。天円地方は、古代中国の思想、陰陽説に基づきます。すべての事柄は陰と陽から成り、それらがお互いに影響しながら、補い合い、調和し合って万物を生成し、発展していくというものです。
例えば、昼は陽性、夜は陰性というように、相反するものをことごとく陰と陽に分けて行きます。男と女、静と動、月と太陽、右と左、奇数と偶数・・・。陰陽説のポイントは、2つに分けるのですが、黒か白かどちらかに塗れというのではなく、黒の量が少しずつ減ると同時に白の量が増え白になり、白になるけれど白が深まることは黒の始まりに近づいて行く・・・というように止まることなく循環していくということです。陰陽師で有名になった太極図は、そのことを理解するとよくできた図であることがわかります。

この陰陽説に基づく宇宙観が、天円地方です。まず、陰陽説に基づいて天と地を陽と陰に分けます。さらに、円と方(方形=四角)、動と静を当てはめると、天は動く円形(丸)、地は不動の方形(四角)ということになり、つまり天円地方は天動説を表します。陰陽説に則り、陰と陽、つまり地と天のバランスがちょうど良くなった状態を「天円地方和合」といい、良い気が充満し万物が生成する理想の宇宙の状態を表します。天円の中に東西南北を示す十字の線をいれ、その点をつなぐと大地である方形が現れます。東西の和合を図るべく中心で半分に折ると左右に三角形ができます。生花の形はこのように導き出されました。この三角形の中に、天・地・人の三才を表す枝を配します。天地人も、やはり陰陽説から導き出された古代哲学であり、天地自然の原則を説明しようとしたもので、宇宙・自然界の動きはこの三才に拠ると考えられ、人間は自然と対立することなく,自然の調和を人間界に求めようとするものです。

 

太極図

太極図。それぞれの気が生まれ、徐々に盛んになっていく様子を表し、やがて陰は陽を飲み込もうとし、陽は陰を飲み込もうとする。陰が極まれば、陽に変じ、陽が極まれば陰に変ず。陰の中央にある魚眼のような白色の点は陰中の陽を示し、いくら陰が強くなっても陰の中に陽があり、後に陽に転じることを表す。陽の中央の点は同じように陽中の陰を示し、いくら陽が強くなっても陽の中に陰があり、後に陰に転じる。太極図は、これを永遠に繰り返すことを表している。<wikipedia「太極図」の説明がわかりやすかったので、拝借させていただきました>

生花 図

 

<参考文献>

花道の思想
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