9月;ダリア “I love youと月と純愛”
夏目漱石は「I love you」を
「月がきれいですね」と訳した。
日本語は曖昧だ。
「僕は」や「君を」はふつう言わない。
ましてや「愛している」なんて
日本人は絶対言わない、と漱石先生。
日本語はいつも相手に、言葉とともに余白を送る。
真っ赤なダリアに“純愛の君”という品種がある。
それは、僕と純愛している君なのか
別の誰かに純愛している君への、
叶わない片思いなのか。
日ごとに涼しくなって行く秋の風。
情熱的な真っ赤な花に
似つかわしくないはずの言葉“純愛”。
余白を残されたドラマは
誰かの頭の中ではじめて完成する。
秋は、そんな物語に想いを馳せるのに良い季節。
ダリアや他のたくさんのお花が
そして月が、美しい季節。
「純愛」といえば普通は、白とか桜色みたいな色を想像するのではないかと思う。なのにこの、情熱的な赤に燃え盛る炎のような花びらが重なったダリアに、“純愛の君”とは。どんな「純愛」で、どんな「君」なのか、想わずにはいられない。そのドラマティックは、ダリアという最高にゴージャスなお花に、とてもよく似合う。