ハロウィーン その国の季節が生むもの

 

最近日本でも、ハロウィーンが定着してきました。

ハッピーハロウィーン!

ところでそれって、なんのお祭りなんでしょう?かぼちゃをくり抜いて仮装してお菓子をもらうお祭り?

アイルランド発祥のハロウィーンは、もともと古代ケルト人の収穫祭だったそうです。ケルトの季節は夏と冬しかなく、その日は夏の最後の日でした。成長と実りと収穫の季節が終わり、暗くて寒い冬が始まる前夜、人々は火を焚き上げて収穫に感謝しました。ハロウィーンに夜のイメージがあるのはそのためです。

日本と同じ自然信仰のケルト文化。季節の変わり目にはあの世とこの世を繋ぐ扉が開き、魔物がこの世へ紛れ込んでくると考えられていました。「仲間なので悪さをしないでね」という意味で、人々は魔物に仮装しました。

移民とともにハロウィーンの文化はアメリカに渡り、キャッチ-なオレンジ色やかぼちゃ、華やかな仮装やパーティが催されるようになりました。ハロウィーンは人々に広まるにつれ、もともとの起源がわからなくなっていくのでした。アメリカを経て輸入された日本ではなおさらです。ジャック・オー・ランタンといえばイタズラな顔をしたかわいいかぼちゃですが、もともとのアイルランドではカブをくり抜いて作られた薄気味悪いランタンでした。

ハロウィーンはどんどん加熱する日本。しかし昔からこの国にはハロウィーンとまったく同じ発想の歳時があります。それは、節分。

節分とはもともと季節の変わり目のこと。アイルランドと違い季節が4つあるこの国では、節分が1年に4回あります。立春、立夏、立秋、立冬の前日。現代では、とりわけその変化が重要だからなのか、「節分」とだけ言えば立春の前の節分のこと指すようになりました。節分には鬼退治に豆をまきます。これは季節の変わり目で、あの世とこの世が繋がり鬼がやってくるから。ケルトのハロウィーンと同じ発想です。そして実は、節分にも仮装をする風習がありました。「お化け」といいます。京都では花街でまだ行われているそうですが、立春節分、人々は普段と違う格好に化けて、鬼をやり過ごします。土地の自然を崇拝し、自然の中に神や魔物を信じた、ほとんど交流のなかった2つの遠く離れた島国に、よく似た文化があるというのは本当に不思議だし、なんとなくうれしい気がします。

そんなケルトのハロウィーンのことや、日本の節分を知らずにカワイイかぼちゃや仮装だけを楽しむのは、もったいないなあと思うのです。
4か月間の、アムステルダム滞在と帰り道のヨーロッパ一人旅で、最後に行った国がイギリスでした。もう帰国10日前というとき、思い切って少しだけ寄ったスコットランドのエジンバラは、都市でありながら要塞のように切り立った山に囲まれて、ちょっと京都に似てるなと思いました。過ごせる時間がわずかで、朝早くからバスでまちへ行きました。私だけが降りたそのバス停で、まちにはまだ朝靄がかかっていて、ストリートミュージシャンがどこかで演奏するバグパイプが聞こえて、耳によく馴染んだその曲は、蛍の光でした。バグパイプの不思議な音色と、深い深い緑の山と灰色の石でできた建物。「この土地の歌だったんだ」と思うと、喉の奥がつまりました。

その土地の、気候や季節や、温度が生むもの。アイルランドやスコットランドがそうであるように、他のすべての国がそうであるように、私たちは日本という、特別な気候や季節をもつ島国に住んでいます。カワイイかぼちゃは大好きだし、しないけど仮装も楽しそう。でも、知らなかったらもったいないと思うのです、ハロウィーンも、節分も。

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形の違う2つの小さなかぼちゃに顔を書いて並べてみたら、「仲良しさん」という感じになりました。
銘「2人は友達」

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