選んだ道は、違っても

大学時代の友人が結婚した。

大好きな友達で、一生友達でいるだろうと思う木村友美とは、しかし普段あまり連絡を取り合わない。だから「結婚する」というメールも、ある日突然来た。「結婚することになったんやけど、花いけてくれへん!?」

結婚式というのは普通、会場とお花がセットになっていて、花屋さんも何度も打ち合わせてすごくこだわったやつを用意してくれるから、あんまりよそから花をいける人が出てくると嫌がられんで、と言うと、その意見は無視された。ウェルカムボードぐらいならいいんじゃない、と続けて言うと、そんなん誰も見てへんからいらん、と言われた。結婚する友美の意見をありがたく尊重して、会場の中にいけさせてもらうことになった。ならば一つだけ譲れないことがあった。二人のせっかくの結婚式に、私がただいけた花がずっと置いてあったら意味がわからない。2人の思い出のエピソードとか、そういうテーマでいけさせてほしい、というと、それには大賛成してくれた。ちょっと相談するわと言って、その日のやり取りは終わった。

約1週間経って、連絡がきた。そこには少し恥ずかしそうに、彼との思い出がいくつか書かれていた。どれもいいなと思った。どれも、結婚するっていいな、誰かと結婚しようと思うっていいな、と思わせてくれるエピソードだった。話し合って、その中から友美の思い出の場所、「高瀬川の桜」をイメージした花をいけることになった。

春夏秋冬、季節を楽しめる場所に遊びに行ったという2人。夏は花火大会、秋は紅葉狩りへ。その中で、ある春の日に行った、京都の高瀬川の桜を2人で見た時の思い出だった。

彼に押されて始まったお付き合いで、友美は誰かと付き合うって時間をとられるし拘束されるし、面倒臭いなと思っていたらしい(ウェディング姿できれいに旦那さんの隣に座っているよりも、そっちの方がよっぽど友美らしいなと思ったことは内緒)。でもそのお花見の日。ぼんぼりでピンクの八重桜を見上げている友美の右手を彼がずっと両手で握ってくれていて、「『あ~この人は私のこと大事にしてくれるやろうし、一緒にいたら幸せなのかな』と、直感的に思った」。その時の桜をイメージした景色を、いけてみることにした。

私たちは、社会学部のマスコミ専攻のゼミで出会った。友美は、目標だったマスコミの道へ。私は花へ。3年生で出会いたった2年間の学生生活を一緒に過ごした。でもそこで、一生友達でいられる友達に出会った。卒業して、文字通り別々の道に進んだ。そして今日友美はまた、新しい道へ舵を切った。その門出を、私が選び取った「花」という道具を使わせてくれて、特別に祝福する機会をくれて、本当にありがとう。

挨拶でそう言うと、涙が出そうで困った。幸せになってほしいと、心から思った。

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