白い壁

彫刻家に会ってきました。

アトリエの真っ白い壁に、何、とも言いえない作品が、

静かに存在していました。

それらが壁の前にじっと置いてあるのを見てると、

なぜだか恐ろしい感じがしてきて、

うっすらと寒気がして鳥肌がたつのです。

彼らと「アート」について話すうちに、私はやっぱり、

自分のやっていることは決して「アート」ではないのだと確信しました。

 

私は花で、何か美しいものを作ったりすることはできないと思うのです。

花の美しさはもうそこにあって、人間が手を入れることで、

もとの姿より美しくするなどということは、ただの幻想だと思うのです。

それでも私たちは花を切る。

それは、花を切ってもっていった場所を、行けた器を、

花の力で、美しくすることができるから。

少なくともそう信じているから。

 

私にできるのは、行ける場所や器を見つめて、

どの花を切って持ってくれば良いか考えること、ただそれだけ。

それが「アート」でなく、「生け花」だと思うのです。

だから時の流れのない、歴史も物語もない真っ白な壁の前に、

生け花をいけることはできないと思うのです。

 

Liet Heringa
Maarten van Kalsbeek
http://www.heringavankalsbeek.nl/#/INTRO

 

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