ケニアのバラ ~コロナショックを受けて華道家が思うこと~

2020年03月12日

ケニアのバラが好きだ。

大味で彩度が高くて、町家の店に置くとよく映える。うちに環境が合っているのかすごく長持ちで、最後まできれいに咲いてくれる。
ケニアから来るバラには、いつもこのタグがついている。品種の名前と長さが書かれた、世界中の花関係者が理解できる英語のタグ。このタグを見ると、いつもテレビで見たケニアのバラ農園と切花流通のドキュメンタリーを思い出す。遠く離れたケニアのどこかのまちのどこかのバラ農園で、出荷頃のバラたちがおばちゃんやお姉さんの手でちょきちょき切られていき、10本ずつくくって、「ジュリエッタ・エリーズ 60㎝」のタグをつけて、揃えのナイロンに包まれる。その日のうちにオランダにある世界最大の花市場にたどり着き、世界のバイヤーに競り落とされて、とても花を扱ってると思えないような、工場みたいなレーンにのせられて行先ごとに分けられ、そこから車と飛行機でヨーロッパ中と世界中に運ばれる。ケニアのお姉さんの手で切られてから木屋町のうちの店にたどり着くまで、たぶん3日くらいなのだと思う。たくさんの国境を越えて、何千人という人の手を経て。

今朝は、コロナウイルスがパンデミックに指定されたというニュースで目が覚めた。コロナショックはもちろん花業界にも大打撃で、謝恩会や送別会の装飾・花束の注文がキャンセルになったという話をあちこちで聞く。コロナウイルスは、公害だと思った。“ケニアのバラ”みたいな、魔法みたいな流通システムが各業界で確立されていて、人もものも、江戸時代の人が見たら卒倒するような速さと簡単さで移動できるようになった。世界中の人を幸せにして、もうそれがみんな当たり前になっていた。でもその最高に発展したシステムが、良いもの・必要なものでないものも、世界中に運んでしまった結果が、パンデミックなのだと思う。

コロナウイルス、本当に困る。マスクと違って花は必需品じゃないから。でも私は、“ケニアのバラ”のある世界がいい。流通産業はここまで発展した。世界を豊かにして、幸せにした。もう後には戻れない。悪いことが起きたからって、すでに享受した利益をなかったことにはできない。
どうしたらいいかわからないんだけど。

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